木造住宅の建築工法が多様化する昨今、いざ自分の家を持つ際にはどの工法を採用すべきか、悩める方も多くいらっしゃるようです。
本記事では代表的な種類を紹介。比較を交えてそれぞれの特徴や違いについて解説します。
さまざまな木造建築工法が生まれる理由
歴史ある木造建築のなかで、どんどんと世に放たれる新たな工法。その背景には、独自性無くして販促が難しいといったメーカー側の切なる思いがうかがえます。木造住宅のニーズはまだまだ健在です。そこで差別化を図れなければ、後塵を拝することになりかねません。そうした危惧を抱いては、ウリや強みにつなげるべく目新しい工法を生み出そうと各社しのぎを削るわけです。
ただし、ここで一つの疑問が浮上してきます。
木造建築工法はそう容易く、次から次へと作り出せるものなのか?
答えはイエス。というのは、実際のところ工法を編み出す仕組みがシンプルだからです。そう、建築工法のほとんどが従来タイプの組み合わせや加工によって生まれています。すなわち、すでに確立されている工法をベースに、あるいはヒントに活用した結果、独創的な建築スタイルができあがっているのです。
木造住宅における代表的な建築工法の種類
前述の通り、基盤となるやり方があってこそ豊富なバリエーションは存在します。
つまり、肝要なのは着想の出発点に当たる基本工法です。
木造住宅における建築工法は、元を辿ればある程度絞ることができます。したがって、実質それらが代表的な(建築工法の)種類といっても過言ではありません。
ずばり大きく分けると3つ。以下、取り上げます。
それぞれ、まずは特徴をしっかり理解しましょう。
木造軸組工法(在来工法)の特徴
木造軸組工法は日本古来より伝わるもっともポピュラーな工法の一つです。在来工法とも呼ばれています。
日本の気候風土とも親和性の高い工法です。また、随所に木の温もりが感じられる点など、長年変わらず人気を博しています。
構造的に述べると、基礎に土台をのせて柱を立て、水平な梁(はり)や斜めに入れるための筋交い(すじかい)といった木材の組み合わせによって建物を支えていく建築方式です。
とりわけ細心の注意を払う必要のある耐震面の強化に関しては、筋交いの量や配置のバランスがカギを握ります。すなわち、職人の技量が試されるわけです。といっても最近では、機械加工や接合補強の質が大幅に向上しているため、以前と比べると属人的な要素は薄まっています。
外観の特徴として挙げられるのは、柱の位置や長さを調整しやすい点です。したがって、デザインや間取り、レイアウトに対する自由度は比較的高い傾向にあります。耐力壁以外であれば、窓やドアなど開口部を設置することも可能です。外壁材料や屋根形状も特に条件の縛りはなく、総じて融通が利く工法だといえます。
ツーバイフォー工法(2×4工法)の特徴
北米由来のツーバイフォー工法(2×4工法)は、2インチと4インチの部材で作った枠に合板を張り合わせてできたパネルを用い、組み立てていく建築方式です。イメージは箱型。壁や床、天井の六面体で建物を支えます。
耐震性に優れ、火災に対しても強いこと、施工の手間が省ける点(コスト削減)などメリット多数です。北米スタイルとあって、洒落た外観を気に入る方も頻繁に見受けられます。もちろん、和風建築も可能です。
工法自体のメカニズムが明快であるため、特に難しい技術は必要ありません。釘の長さや打つ間隔こそ規定されていますが、各職人による仕上がりのバラつきは少ないといえます。
一方で、デザインや間取り、レイアウトに対する自由度は低いものだと考えておいてください。増改築やリフォームの際には、構造上(構造体が壁であるため)制約が多少なりとも出てきます。
木造ラーメン工法の特徴
木造ラーメン工法とは、木質構造でのラーメン架講を可能にした建築工法です。
そもそもラーメンとは、長方形の枠に当たる柱や梁の接合する部分が変形することのないように剛接合した構造を指します。
ラーメン工法自体は、鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)で馴染みの深い建築方式です。他方、木造の場合、部材同士を強力に接合することが難しく、かつては採用されてこなかった経緯があります。
けれども、接合部、構造部材に専用の金物、集成材を用いることで積年の課題が解消。鉄骨と同様、2方向への剛接合が可能になっています。今では、木造住宅で使われることも決して珍しくありません。
施工は実にシンプル。上記の金物、集成材を介し、柱と梁をハイテンションボルトで固定するだけです。
外観も秀逸。柱と梁だけで建物を構成するため、全方位にスパンいっぱいの開口を設けることができます。多くのマンションや公共建築で使われている工法がまさにこれです。
また、「躯体現し(柱や梁などの構造材が見える状態)」によって、木造ならではの趣や美しさが際立つ場面も多々見られます。加えて、建築後の間取り、レイアウト変更にも柔軟に対応できることから、インテリアに注力したい方にとってはうってつけの工法だといえます。
各工法を主要ポイントごとに比較!
木造建築においてどの工法を採用するかは、どの要素を重視するかによって変わってきます。もちろん総合的に判断することも大事です。
以下、耐震性や自由度といった決め手となり得る主要ポイントごとに比較。ぜひ、参考にしてみてください。
耐震性
どの工法も建築基準法によって定められた一定水準の耐震性能は持っています。そのなかで特に優れているのがツーバイフォー工法です。面で住宅を支えるため、力を分散させることができる点は優位性そのものといえます。柱で支える木造軸組工法や枠で支える木造ラーメン工法と比べると、やはり一歩リードしているでしょう。とはいえ劣勢の両者ともに、近年、強度アップの工夫がなされているのも事実です。耐力壁に筋交いではなく構造用合板を使った木造軸組工法があれば、木造ラーメン工法では剛接合の精度向上にひらすら注力し強固な柱を作り上げるやり方も見られます。
あえて軍配を挙げるならばツーバイフォー工法ですが、厳密には今やどの工法も耐震性の強化は可能です。
防火性
防火性の高さに関しても、筆頭に挙げられるのはツーバイフォー工法です。やはり面が多い分、炎を跳ね返しやすいため、他の工法に比べて優位に作用しやすいものと思われます。ただし、それはあくまで単体精査による傾向です。木造軸組工法でも、ツーバイフォー工法をヒントにファイヤーストップ材を取り入れるなどして十分な防火対策を図っているケースが見受けられます。
一般的な特徴でみるとツーバイフォー工法が防火性に強いといえますが、無条件に採用するのはやや短絡的かもしれません。前述した通り、どの工法も技術の進化は顕著です。時代が進むにつれて防火性を含めた品質の安定度は、もはや均衡するようになってきたといっても過言ではないでしょう。
各種工法、なるべく一通り吟味することをおすすめします。
自由度
木造軸組工法と木造ラーメン工法は自由度の高さがウリです。
たとえば木造軸組工法では、柱と梁を点として捉えることができるため、空間の広さや形をある程度柔軟に作り出せます。
また、木造ラーメン工法では、耐力壁や筋交いの配置にとらわれない設計が可能です。大きな窓の設置も比較的容易に行えます。
なお、両者を比較した場合、広く大きく自由なデザインを求めるのであれば、やや後者に分があるのかなといった印象です。
一方でツーバイフォー工法は制約が多く、間取りの変更やリフォームには向いていません。面で家を支えている分、壁をくり抜くといった作業によって強度が失われる可能性が高いからです。
価格面
価格面で比べると、木造ラーメン工法はやや費用が嵩む傾向にあります。というのも、ほとんどのケースで精度の高い加工や施工を必要とするからです。
対して木造軸組工法は、(工法の)普及率が高いため、比較的多くの業者やプランから選べます。結果、安いお値段で受けてもらえることもしばしば。技術に関しては属人的な部分もあり、また工期も長くなりがちな側面こそ無視できませんが、希望の価格帯でのサービスは見つけやすいでしょう。
ただそれ以上にツーバイフォー工法の場合だと、さらにコストを抑えられる期待が持てます。
細工を要さず大量生産された木材を使用する点など、施工スタイルが合理的かつシステム化されているため、手間がそう掛からない分、価格面も融通が利きやすいといえるでしょう。
木造建築の可能性を広げた各工法の発展形
従来の建築方式との差別化に腐心するメーカーがひしめくなか、オリジナリティが際立つ工法も確かに散見されます。しかし、繰り返しお伝えしている通り、ベースは件の3種類です。
と、そうはいってもやはり、アレンジセンスが光るがゆえ、新たな基盤勢力として台頭する可能性も否めません。そしてその兆しを感じるのが、代表的な3種類から派生した、いわば発展形と呼ぶにふさわしい以下の木造建築工法です。簡単にご紹介します。
木造軸組工法の発展形-木造トラス工法-
柱や梁などの木材を専用の特殊プレートを用いて、従来の四角形ではなく三角形へと変えて組み合わせていく工法です。耐久力アップが期待できます。
ツーバイフォー工法の発展形-モノコック工法-
基本は2×6工法。特殊な板や金物、剛床などを取り入れ、強度アップにつなげています。
木造ラーメン工法の発展形-BF(ビッグフレーム)工法-
大手ハウスメーカー住友林業による、オリジナルの集成材や接合方法を採用した工法です。
かつてのラーメン工法が抱えていた耐震に対する不安も、この型で以て一気に払拭。現代における木造ラーメン工法の主流と呼んでもいいでしょう。
木造住宅づくりには、各工法の理解と整理が大事!
木造住宅を望む際は、少なからず各工法に対する学びが大事です。
とりわけ種類の把握は基本といえます。拙稿で述べた通り、大きく分けて3つです。木造軸組工法(在来工法)、ツーバイフォー工法(2×4工法)、木造ラーメン工法。それぞれ一長一短あるなか、要所はしっかりおさえるようにしましょう。
基礎知識を盤石にすれば、理想はさらに膨らむものと思われます。近年の多様化傾向や発展形の乱立に対しても戸惑うことなく向き合えるでしょう。工法の根本が分かれば、情報の混乱を招かずに済むはずです。むしろ選択肢が広がる分、より好みの家づくりが実現できる期待が持てます。
重視すべきポイントや目的は何か。そこで優位性がみられる工法はどの種類か。明白に洗い出したうえで、ぜひとも後悔の無い選定へとつなげてください。